同じ職場に若い男の子がいる。
年齢を聞いたわけではないが、25歳くらいだと思われる。
彼の声はすぐに覚えた。名前よりも顔よりも声で認識した。
どちらかというと高めの声で聞き取りやすい。滑舌も良く、言葉の一音一音がクリアに聞こえる。
笑う時も「ハハハハッ」と明るく笑う。
この人なんだか華があるなと思った。
時々話すことがある。
といってもわたしから話しかけることはない。
わたしは仕事中は陰キャなのだ。
彼の方から「お疲れ様です!」と話しかけてくる。
わたしと逆の「陽」な彼。
まぶしくてつい一言二言だけ返して、あとは愛想笑いで逃げてしまう。
彼は会話する時、真っ直ぐ目を見てくる。
目からビームを出されてるわけでもないのにHPが削られてる気がする。
レベル上げしなきゃ勝てない、ちくしょう。
彼は人との距離が近い。
誰にでも明るく気軽に話しかける。性別も年齢も関係なくだ。そしてそこにはいつも笑い声が響く。
彼の顔はトイプードルみたいだ。
周りからは可愛い顔してSなんだよと言われている。
何それ、一番モテるやつじゃん。
わたしはSっぽい顔でSなので全然モテない。Mに転生するか?
彼は仕事ができる。いや、実際には彼がどんな仕事をしてるかよく知らない。でもフロアで偉い人が座る席に座っている。だからそういうことなんだと思う。知らんけど。
彼は人たらしだ。
2ヶ月半同じフロアで過ごした感想だ。
心の距離を縮めるのが早い。そしていつだって同じ顔をしている。いつだって彼は彼のままだ。
だから安心して人が集まるのだろう。
わたしはすっかり彼のファンになってしまった。自分が25歳くらいの時、こんなオーラ1ミリも出せなかった。だから純粋に尊敬してしまうんだ。
人たらしな彼と人見知りのわたし。
あと3ヶ月くらい経てばわたしから話しかけられるだろうか。3ターンくらい会話続けられるだろうか。
いやぁ、夢の中でも無理だろうな。
いつの日か大物になりそうな人たらし君。
明日もハハハハッて声を響かせて欲しい。