「今日は散々な一日だったな」と思う日がある。
何をやっても上手くいかない、何もしたくない、何が食べたいのかもわからない。そんな、自分に還れない日だ。
今日はそれとはまた少し違った。
朝から午後3時頃までは調子が良かった。つまりいい気分だった。だけど夕方からなんだかモヤモヤしてきた。イライラしてきた。あー、なんか面白くない。
原因はわかっている。だからこそ頭をフル回転して解決方法を探す。そして、疲れる。
ベッドに倒れ込んで、天井を眺めた。このまま寝てしまおうと思ったが、隣の住人がガタガタうるさい。
あーあ。お昼まではあんなに平和だったのになぁ。
余計に滅入ってきた。
コーヒーを飲もう、とキッチンへ向かう。わたしはコーヒーが大好きだ。
コーヒーは惰性で飲んだって美味しいんだ。
ふと、シンクに目をやる。
シンク内にプラスチックの食品トレーが立てかけてあった。昨晩使った豚肉の空きトレーだ。そういえば洗ってから放置したままだった。
手に取りビニール袋にしまおうとして、わたしはとても驚いた。
小さな豚バラが一枚くっついていた。
えっ?
思わず声が出た。
なんで…?
全部使ったはずだし、トレーはスポンジで洗ったはずだし、水で綺麗に流したはず。
うーん、と昨日のことを思い出しながらしばらく眺めていたら、だんだん可笑しくなってきた。
端っこに残ってるのが可愛く思え、見つかってしまった!と言ってるような気がして愛おしくなった。そして思わず写真を撮ってしまった。
袋にいれて片付けながら、「夜中にキッチンで空きトレーをカメラに納める自分」を俯瞰で見て、なにやってんだ、とまた笑った。
そして、ふーっと大きくため息をついて、もう大丈夫だなと思った。
ため息を深呼吸に変える何かが、この世界には溢れてる。
大好きな曲の1フレーズだ。
きっかけがトレーにくっついていた豚バラなんて、なんだかわたしらしくて最高じゃないか。
そんな自分の感覚に、深呼吸をしてコーヒーで乾杯しよう。