今、わたしは公園にいる。
わたしの座るベンチの少し前の方で、女子高生2人がスマホに向かって色々なポーズをとっている。
片足を横に伸ばして立ってみたり、両手をクロスさせたり、絶対それ腰いわす!ってくらい身体をひねってみたり、ゲッツ!しながらジャンプしたり。わたしはすっかり目が離せなくなった。
撮ってはチェック、撮ってはチェックを繰り返し、スカートをひらひらさせながらとても楽しそうだ。
可愛いなーと微笑ましくみていたのだが、わたしは重大なことに気付いてしまった。
わたしは彼女たちと同じ延長線上のベンチにいるのだ。
彼女たちのスマホ画面の後方にはたぶん、いや、絶対わたしが写っている…!
彼女たちが帰りの電車の中でカメラファイルを見返した時、後方でにやけながら自分たちを見ている変な女の存在に気づくだろう。
「ちょw見てこれwこの人めっちゃこっち見てんだけどーwwwしかもなんか笑ってんしーwwwまじウケんだけどーwww」
「うわwまじだw草ァw」
まずい。それは非常にまずい。ズームされて笑われるなんて嫌だ。
今からでも間に合う。よし。
わたしは風景に馴染むことを意識した。彼女たちの邪魔をしないように。違和感を与えないように。馴染む、馴染むんだ、わたし。わたしは木であり、砂であり、鳥であり、風だ。
そうだ、風だ。
わたしは風になるんだ!!
彼女たちから視線を外し、なんなら目を瞑り、風になりきってみた。
数分後、やっぱり気になって前方を見てみたら、もうそこには誰もいなかった。
なんか悲しかった。帰ろう。